コンセプト

金融市場における価格と時間の変動は、一見すると無秩序でランダムなものに映るかもしれません。しかし、市場データには、価格と時間の比率、幾何学的な構造、周期性など、さまざまな規則性を見いだすことができます。

W.D.ギャンやラリー・ペサベントらの研究にも見られるように、数学・幾何学・比率・サイクルといった概念は、チャートを研究するための一つの視点として利用されてきました。

METRIXは、こうした数学・幾何学的な概念をチャート上で扱うための分析・研究用ソフトウェア(TradingView専用インジケーター)です。

数学や幾何学、サイクル理論によって将来の価格動向を完全に予測できるわけではありません。METRIXが提供するのは、過去の市場データをもとに、価格と時間の関係、幾何学的な比率、周期的な構造などをチャート上に視覚化し、ユーザー自身によるチャート研究・分析・学習を支援するための機能です。

ピタゴラスの定理 (The Pythagorean Theorem)

天文学者のヨハネス・ケプラーは、著書『宇宙の神秘』の中で、「幾何学にはふたつの宝石がある。ひとつはピタゴラスの定理。もうひとつは黄金比である。」という言葉を残しました。

ルネサンスの偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、アルブレヒト・デューラーらは、自分を芸術家というだけでなく、建築家、技術者、数学者とみなしていました。

ピタゴラスの定理は、数学史上、最もポピュラーな定理であり、幾何学の起源である測量から、建築、土木、製造業、IT・ゲーム開発、地震解析など、あらゆる分野で現れ活用されています。これは共通的な、「数と形の繰り返しパターン」=空間・幾何学的な構造を定量化するための、数学史上最も普遍的かつ基盤的な共通パターンであると言えます。

直角三角形において、斜辺の長さを c、他の2辺の長さを a, b としたとき、以下の関係(三平方の定理)が成り立ちます。

a² + b² = c²
ピタゴラスの定理 図1

この定理の本質は、直角(90度)を挟む2辺の上に描かれた2つの正方形の面積の和が、斜辺の上に描かれた正方形の面積と完全に等しくなるという「正方形の面積の保存則」にあります。

ピタゴラスの定理 図2
  • 上図:数直線上で長さ1の底辺と、垂線(長さ1)によって作られる直角三角形です。ピタゴラスの定理により斜辺の長さが√2になります。
  • 左図(正方形):1辺の長さが1の正方形に対角線を引いた直角二等辺三角形です。対角線の長さは√2になります。
  • 中央図(多角形 / 直角三角形の連鎖):「テオドロスの渦巻き(螺旋)」などに見られる、無理数を次々に作図していく手法の一部です。
  • 右図(長方形):幅1、高さ2 of 長方形に対角線を引いた直角三角形です。対角線の長さは√5 になります。

■ チャート研究への応用: チャート上の横軸は「時間(Time)」、縦軸は「価格(Price)」を表し、これらは90度で交差しています。ピタゴラスの定理をチャート分析に適用することは、独立した「時間変化幅(dt)」と「価格変化幅(dp)」という2つの軸の要素を合成し、斜めの「トレンド方向へのベクトル(斜辺)」として視覚的に整理・定量化することを意味します。

価格の変動速度(dp/dt): 金融工学やアルゴリズム取引において、価格の変化幅を時間変化幅で割ることで、価格がどれくらいの速さで動いているか(スピード)を計算できます。物理の速度(移動距離÷時間)と同じ考え方です。 株価や為替のチャート分析、高頻度取引(HFT)などで、短時間の値動きの勢いや傾きを数式で表すときに使われます。

フリーメイソンのシンボルと幾何学

フリーメイソンの象徴体系には、スクエア、コンパス、文字「G」、ユークリッドの第47命題(ピタゴラスの定理), プロビデンスの目など、幾何学と関係するシンボルが数多く存在します。
この関係について、ロンドンのフリーメイソン博物館は、フリーメイソンの象徴における「G」を Geometry(幾何学) と説明しています。
フリーメイソンの代表的なシンボルであるスクエアとコンパスについても、これらが実際に石工が使用した道具であり、スクエアは石材の直角を確認するために使用され、コンパスは石材に円や円弧を描くために使用されました。
フリーメイソンにおける幾何学は単なる後世の「神秘主義的な解釈」ではなく、石工・建築の実務と直接関係する伝統を持っています。

  • スクエア:直角を確認・構成する道具
  • コンパス:円や円弧を描き、距離を移す道具

スクエアとコンパスの中央に配置される「G」については、特に重要です。英国以外の多くの国のフリーメイソンでスクエアとコンパスの中央に「G」が配置され、その意味を Geometry(幾何学) としています。さらに、Geometryはフリーメイソンにおける最も古い象徴の一つであるとされています。一方、「G=God(神)」という解釈も存在します。

フリーメイソン シンボル

フリーメイソンとユークリッド幾何学の関係を示す重要な例が、「ユークリッドの第47命題(ピタゴラスの定理)」です。フリーメイソンの象徴体系にユークリッド幾何学が実際に組み込まれていることは、歴史的な資料から確認できます。

マンリー・P・ホール『秘密の教え(The Secret Teachings of All Ages)』
マンリー・P・ホール『秘密の教え(The Secret Teachings of All Ages)』
フリーメイソン 古文書
ユークリッド第47命題

黄金比・フィボナッチ数と神聖比例 (The Golden Ratio & Sacred Proportion)

フィボナッチ数列は、前の2つの項を足し合わせていく数列です。0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233…
この数列の隣接する数値の比率は、項が進むにつれて黄金比φ 1.618(またはその逆数0.618)に収束します。

黄金比 螺旋

黄金比はオウムガイの対数螺旋やひまわりの種など、自然界のあらゆる「成長パターン」に現れます。これは、自己相似的(フラクタル)にスケールを拡大しても形が崩れない唯一の比率だからです。

神聖比例 デザイン
デザインに見る神聖比例

■ チャート研究への応用: 黄金比・フィボナッチ数による分析は、自然界や数学に見られる黄金比率(約1:1.618)およびフィボナッチ数列から導き出される比率を、チャート上の「価格」や「時間サイクル」の分析に応用したテクニカル手法です。価格・時間の比率関係を整理するための基準としてグリッドやラインを可視化し、チャート構造を研究する手段として広く使われています。

ヴェシカ・ピスキス (Vesica Piscis)

同じ半径を持つ2つの円が、互いの中心を通るように重なり合った状態から作られる神聖幾何学の基本シンボルです。
この交差部分に作られる魚の目の形状(レンズ)の「垂直軸」と「水平軸(中心間距離)」の長さの比は、厳密に 1 : √3 (√3 ≈ 1.73205…)となります。

この図形は、古代幾何学において「無(1つの円)」から「極性・二元論(2つの円)」が生じ、そこからあらゆる無理数(√2, √3, √5)や正三角形・正六角形が創り出される「創造の門」とされてきました。
円が重なり合う形態は、ラテン語で「ヴェシカ・ピスキス」(魚の浮き袋)と呼ばれ、古代から創造の始まりや対立する要素の調和を示す象徴とされ、キリスト教美術や中世の建築・石工の装飾、シャルトル大聖堂の西正面など、中世建築においても使われてきました。

ヴェシカ・ピスキス 幾何学
ヴェシカ・ピスキスに見られる数学的な根源と比率

キリスト教の伝統では、魚のシンボルとしてキリスト教を象徴しています。

主の変容
『主の変容(Transfiguration)』
ヴェシカ・ピスキス 応用

■ チャート研究への応用: 2つの基準となるポイント(ピボット)を各円の中心とし、その重なり合いから生まれる √3 の比率を基準にして、チャート上の幾何学的な対称関係や交点を可視化し、チャート研究の補助線として活用します。

ダイアグラム ― 半対角線が創り出す調和の幾何学 (The Diagram & Semi-Diagonals)

正方形を用いて〈ダイアグラム〉を作成するには、4つの頂点から対向する辺の中点(半分)へ向けて、計8本の「半対角線(Semi-Diagonal)」を描きます。
正方形の1辺を1(半分の長さを1)とすると、その「辺の長さの半分(1)」と「半対角線の長さ」の比は、ピタゴラスの定理により 1 : √5 (√5 ≈ 2.23606…)となります。

この √5 は、黄金比 φ = (1 + √5) / 2 の算出を根底で支える幾何学的数値です。8本の半対角線が交差することによって、中央に美しい対称性を持った「つぶれた星形(スターカット)」が浮かび上がり、目盛り(数値)を使わずに空間を自律的かつ完全に調和した比率(整数比や黄金比関係)に等分割・比例分割します。

ダイアグラム 描画1 ダイアグラム 描画2 ダイアグラム 描画3 ダイアグラム 描画4
ルカ・パチョーリの肖像画
「ルカ・パチョーリの肖像画」。構図にダイアグラムが使われている。

■ チャート研究への応用: この8本の半対角線と対角線(対角頂点を結ぶ線)が交差して作るグリッドは、時間と価格が形成する単一スクエア内部の幾何学的な比率関係を可視化します。この幾何学的分割点(星形の交点)は、価格と時間の比率関係が一定の調和を示すアングルラインやグリッドラインを描画するための基準として機能します。

■ W.D.ギャン理論(Gann Box / Gann Square)との関係: このダイアグラムの仕様は、W.D.ギャンの「Gann Box」や「Gann Square of 144」などのスクエアリング理論と共通の土台(時間と価格の比率的統合)を持っています。
・スクエアリング理論をベースとし、スクエア内の主要対角線(1×1アングル=45度)やダブル・スクエア長方形の対角線(1×2アングル、√5)といった、時間と価格の幾何学的な関係を表すリサーチ用の補助ラインを描画します。

参考文献

  • 『The Magic Word』 W.D. Gann (1950)
  • 『Astro-Cycles: The Trader’s Viewpoint』 Larry Pesavento (1987)
  • 『Harmonic Vibrations: A Metamorphosis from Traditional Cycle Theory to Astro-Harmonics』 Larry Pesavento (1996)
  • 『Fibonacci Ratios with Pattern Recognition』 Larry Pesavento (1997)
  • 『Complete Stock Market Trading and Forecasting Course』 Michael S. Jenkins (1999)
  • 『Basic Day Trading Techniques』 Michael S. Jenkins (2007)
  • 『Integrated Pitchfork Analysis: Basic to Intermediate Level』 Mircea Dologa (2009)
  • 『Day Trading For 50 Years: The Michael S. Jenkins Methods』 Michael S. Jenkins (2022)
  • 『アストロ・エコノミクス:占星術と景気循環』 David Williams(1959)
  • 『Nifty予測のための101の占星術の組み合わせ』 クリシュナ・アトリ
  • 『アストラル・ファイナンス:惑星のサイクルと市場予測』 Louise McWhirter
  • 『アストロ分析・トレーディング入門』 Myles Walker
  • 『ハーモニック・マスターリー:フィボナッチ比率とパターンを用いたトレード』 Lewis Glasgow
  • 『価格予測のための金融占星術モデル』 Alon Avramson
  • 『McWhirterの株式市場予測理論』 Louise McWhirter
  • 『惑星株式取引:最初の取引チャート』 Bill Meridian
  • 『ジョージ・ベイヤーのアストロトレーディングのルールと観察』 George Bayer's
  • 『ユニバーサルクロック:W. D. ガンの足跡をたどる時間と価格の予測』 Jeanne-Long
  • 『聖書解釈における黄道帯の鍵』 George Bayer
  • 『占星術の400年間を実用的に活用する方法』 George Bayer
  • 『株式市場における時間要因』 George Bayer(1973)
  • 『ジョージ・ベイヤーのトレーダーのための占星術のルール』 George Bayer(1940)
  • 『金融占星術:惑星の影響が市場サイクルに与える影響』 David Williams
  • 『小麦と株式市場における惑星の鍵』 George Bayer(1939)
  • 『Gann's Scientific Methods Unveiled: Volume 2』 パトリック・ミクラ
  • 『美しい幾何学』 ERI MAOR AND EUGEN JOST 丸善出版(2015)
  • 『シークレット・コード-芸術・自然・科学を表す神秘の法則』 プレヤ・ヘメンウェイ
  • 『<ダイアグラム>の不思議』アダム・テットロウ(2023)
  • 『幾何学の不思議』 ミランダ・ランディ 創元社(2011)
  • 『コンパスと定規の数学』 アンドルー・サットン 創元社(2012)
  • 『Harmonic Trading, Volume One』  Scott M.Carney
  • 『Harmonic Trading, Volume Two』  Scott M.Carney
  • 『ギャン理論』 ジョージ・マクローリン 総合法令
  • 『実践ギャン・トレーディング』 ジェームズ・ハイアーチェク 日本経済新聞社
  • 『ギャンの相場理論』 林 康史  日本経済新聞出版社
  • 『数の魔力』 ルドルフ・タシュナー 岩波書店
  • 『基礎から発展まで 三角関数』 小林 道正 ベレ出版
  • 『数学の隠れたハーモニー』 ロバート・カプラン ソフトバンク・クリエイティヴ株式会社
  • 『幾何学』 マイク・アスキュー&シーラー・エバット 創元社
  • 『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』 シュボーン・ロバーツ 日経BP社
  • 『測る』 上野 健爾 東京図書
  • 『黄金比はすべてを美しくするか?』 マリオ・リヴィオ 早川書房
  • 『運は数学にまかせなさい』 ジェフリー・S・ローゼンタール 早川書房
  • 『天才数学者はこう賭ける-誰も語らなかった株とギャンブルの話』 ウィリアム・パウンドストーン 青土社
  • 『パターン認識と機械学習 上』 M. ビショップ 丸善出版
  • 『統計的パターン認識と判別分析 (シリーズ 情報科学における確率モデル 1)』 栗田 多喜夫 、 日高 章理 コロナ社
  • 『量子力学の〈新常識〉』 堀田 昌寛 講談社
  • 『宇宙一わかりやすい「量子力学」大全 目に見えない世界を味方にして人生を好転させる56の法則』 田畑 誠 KADOKAWA
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